2010年3月22日月曜日
★ 宣戦布告:あとがき:麻生幾
● 2010/12[2010/03]
『
広島県呉市で海上自衛隊の極秘部隊が誕生したのは一昨年。
<海上警備隊(仮称)>なる防衛長官直轄の日本版"SELS(米海軍特殊部隊)"が一個小隊規模で編成されたのだ。
ほぼ同時に、陸上自衛隊にも対ゲリラ戦特殊部隊が生まれ、早くもアメリカで過酷な訓練を経験したという。
実戦配備も間もなくだとされている。
この3年間、日本を取り巻く安全保障の「環境」は劇的な展望を遂げていると言っても過言ではない。
その象徴がこの2つの"特殊部隊"の誕生だ。
しかし、その実態はさらにスケールも大きく、日本という国家を変えようとしている。
最大の理由は、やはり<テポドン日本横断事件>と<北朝鮮領海侵犯事件>だろう。
センセーショナルに報道された2つの事件は、日本人に安全保障と言う忌み嫌われて来た現実を、問答無用に喉元へ突きつけたからだ。
熟睡中を叩き起こされたかのように、政治家たちは慌てて法律改正と様々な予算処置を官僚たちに号令した。
自衛隊と警察との間で氷漬けされていた協力協定を見直し、新しい装備を取り入れ、自民党内でも議論が沸騰した。
本書『宣戦布告』を単行本として出版したのは、その大きなうねりが起きる直前のことだった。
執筆を思いついた契機は、ごく単純なことである。
外国のゲリラ部隊が日本に上陸しても<自衛隊は出動できない>という実態に、素直に驚いたことがすべての始まりだった。
そして様々な関係者にインタビューを求めた。
データを詰め込んだファイルが重ねられるにつれ、私は愕然とした。
皮肉にも、日本の安全保障の混乱した現実がドラマ性を発揮したのである。
そして今、文庫本として出版するという話が担当編集者の方から寄せられ、私の前に再び『宣戦布告』が帰って来た。
もう一度、その拙稿を捲くった時、日本のいったい何が変わって、何が論議され始めたのかと改めて考えさせられることとなった。
2001年1月現在の、出来うる限りの最新情報を取り入れ、単行本では書き込めなかったデータも交えた。
単行本では差しさわりがあった非公開資料も引っ張り出した。
そうして出来上がったのが、この『加筆完全版・宣戦布告』である。
ただ、それでも尚、すべての情報と事実は、まだ私のファイルの中に積み残されている。
本書に登場する主人公たちがなやみ、慟哭する現実派、余りにも深いドロの中に埋まっているからだ。
本書はフィクションである。
つまり"作り話"だ。
だが、どんどん駒を推し進めてゆく、シュミレーションでもない。
私の新たな挑戦---そう理解していただければ幸いだ。
2001年3月 浅生幾
』
【習文:目次】
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