2010年2月19日金曜日

: 差のない文明

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● 1995/07



 日本の経済力が増すとともに、他の国の人々から、
  「日本人は顔の見えない民族だ、なにを考えているのかさっぱり分からない」
 といわれますが。これはあたりまえだと思うのです。
 日本は無謀にも世界を相手に実力以上の戦いを挑み、そして敗北して占領されたのです。
 被占領国というものは歴史の常で、でかい顔をしたり、反抗的なパフォーマンスをすると命を失うばかりか亡国の道にさらされます。
 日本は必要に応じて欧米の仮面をかぶったのです。‥‥が。

 西欧の弱肉強食の植民地主義のリーグ戦の行われる中で、日本人が西欧文明に追いつくことにより植民地化を逃れようとした判断力と意思の強さは、正しかったし、東洋の一島国の戦略としては、健気であるし、時代背景を考えると極めて特異で、ユニークで創造的と言ってよいと思います。



 日本人がアイデンテイテイに対して遠慮深く、慎み深い心で関心をもちはじめたのは、一つには経済大国として自身をもちはじめ、敗戦の劣等感から立ち直ったからでしょう。
 もう一つには他国から「顔の見えない日本人」などといわれ、せっかく持ち始めたプライドを傷つけられたせいもあるでしょう。

 気がついたら鉄壁のように見えた巨大な欧米文明の壁を突き抜けてしまっており、前に目標とすべきものがなくなってしまい、視野狭窄の状態に陥ってしまっていた。
 困ったことにその時期に平成大不況に突入してしまい、さらに自信を消失してしまった。
 これはどうしても、足元を見極め、自国の歴史文化に独自性が在るか否かと、はじめて過去を振り返って、慎重に用心深く自国のアイデンテイテイの浮上作戦にとりかかっていかざるを得なくなってしまったのです。

 日本人は島国なのに、他国との文明の差を非常に気にする民族だと思います。
 はじめは中国文明に、次は西欧文明に追いつき、差を縮めることが国民的悲願でした。
 まさに差を縮めることに熱中したのです。
 興味を持つのは、差をなくすことに異常にまで執着する日本人の民族性が、また気づかぬうちに、再び歴史的転回を開始したのではないかと思うことです。
 富める欧米との差を縮めることに費やしたエネルギーが、今度は客に貧しい国を豊かにするために行動を起こしていると思えるのです。
 世界で、富める国は25%、その他の75%は貧しく、飢えに苦しむ国も多いのです。
 実際には、日本国内の円高、人件費の高騰、税制規制を逃れるため、企業や人は積極的に海外に出始めています。
 そのように国外に散らばりはじめた人々が、日本人の習性を発揮し、今度は75%の

貧しい国々を指導し、富める者と貧しき者との「差のない文明」を築くかもしれません。



 日本はODAに出すお金も世界一ですが、環境保護のために世界に出すお金も世界一です。
 公害を抑える科学技術もダントツ世界一の優等生です。
 冷戦以後の混沌の世界の中で、平成不況で傷つけられはしましたが、日本はうっすらと「顔」を表しはじめたと思うのです。
 地球の環境保護立国として世界に貢献していく道です。







 【習文:目次】 



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