2010年2月7日日曜日
: 魔性系の女
● 2006/10
『
久々に"魔性系"の女に遭遇した。
魔性系というのは、その目を見ただけで虜にされてしまう、特殊なフェロモンを分泌している女のことである。
いや、心を虜にされてしまうくらいであれば、まだいい。
催眠術をかけられたように、引き込まれてしまうのだ。
仕事柄、そういう女性に遭遇する機会は多いと思うのだが、それでも最近はとんとお目にかかれなかった。
幸運なことに、その魔性系の女性を含めて十人ほどで食事をすることになった。
待ち合わせ場所のレストランに、一時間ほど送れて行って驚いた。
参加者十人のうち、男性六人全員が魂を抜かれているのである。
恋の臨死体験状態。
「オ~イ、みんな、帰って来~い」
今まさに、三途の川を渡ろうとしている男性人に声をかけた。
みんな、はっと目がさめたような顔をした。
「危なかったあ! 秋元さんに声をかけてもらわなかったら、今頃、すべてを捨てて彼女について行っちゃうところでした」
「彼女は"ハーメルンの笛吹き"か!」
魔性系は穏やかな微笑みを浮かべ、男性人の話を聞いている。
そう、魔性系の女性は、聞き上手である。
相槌がうまいわけでもなく、輝かせて聞いているわけでもない。
何も聞いちゃいないのである。
ただ、じっとしゃべっている人を見つめている。
男は舞い上がり、さらに饒舌になら。
まるで、しゃべると災いが降りかかるかのように-----。
ふいに、魔性系が、それまでの話の流れとはまったく関係なく口を開く。
「‥‥ねえKくん、どこか連れてってよ」
次の瞬間、Kくんは魔性系の手にあっさりと落ちる。
ぼろぼろになるまで目をさまさないだろう。
もし、魔性系がこうつぶやいたら、どうするだろう。
「私ね、あの人、嫌い。この世からいなくなればいいのに-----」
Kくんはふらふらと立ち上がり、魔性系が喜ぶことをしに行ってしまうのではないか?
魔性系には、そのくらいの力があるのだ。
魔性系の見分け方を教えておく。
①「個性的な美人である(誰にでも受け入れられる美人ではない)」
②「群れをなさない」
③「思わせぶりである」
④「会話の途中で、突然黙って、十秒見つめる」
⑤「酒が強い」
⑥「帰る時は、突然、帰る」
⑦「男の勇気を試すようなことをさせる」
⑧「夜が強い」
⑨「何度も読み返して意味を考えたくなるようなメールを送って来る」
⑩「突然、連絡が途絶える」
近くにこういうタイプの女性が出没したら、要注意である。
もし、遭遇してしまったら、
1...目を合わせないこと
2...通り過ぎるまで、死んだふりをすること
である。
』
<註:おじさんは、君子は危うきに近寄らない、と教えるのである>
【習文:目次】
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