2010年2月7日日曜日

★ おじさん通信簿:秋元康


● 2006/10



行動パターンその④

 『おやじは、自分の行動を予告するような独り言をいう』
 
 「さあ、俺は風呂に入るかな」
 「俺は、もう寝よう」
 「本でも読むかな」
 親父は孤独だ。
 家族もさして興味をもってくれなくなるため、「俺は、ここにいる」というアピールを<携帯テレビ電話で>そっとするのである。
 携帯電話のいろいろな機能を使いこなしていない人は、多い。
 特に、僕たちのようなおじさんは、電話以外の用途では、メールを使うのが精一杯ではないだろうか?
 (何しろ、新たに知り合った人の電話番号を入力するだけで大騒ぎなのだ)
 せっかくのカメラ機能も、写したくなるような出来事に出会わないからと言って、一度も使ったことがないというのがほとんどだ。
 いや、もし、どこかで何かを撮りたいと思った瞬間があったとしても、
 「どうやってカメラモードにすればいいんだっけ?」。
 しかも、もし撮れたとしても、その写真なり動画をどうすればいいかがわからない。
 キレイに撮れたのだが、この写真に文章をつけて、メールで送ろうとしたのだが、メールに写真を添付する方法がわからないのだ。
 やはり、携帯のいろいろな機能は、おじさんにとっては「宝の持ち腐れ」だ。
 だから、最近、電話以外の機能をなくしたシンプルな携帯電話が出たというのを聞いて、それに買い替えようかと考え始めていた。

 それが、知り合いに携帯でのテレビ電話の使い方を教わって、すっかり、はまってしまった。
 僕たちの世代が、子どもの頃から憧れていたあの"テレビ電話"である。
 あの頃、リニアモーターカーと並んで、未来を語るアイテムだったテレビ電話が、携帯で使えることを知って感動した。
 もちろん、テレンビのコマーシャルで見ていたのだが、実際に、自分で使ってみるのとは大違いである。
 先月、テレビドラマの脚本と小説を書くために、ホテルに缶詰めになっていたのだが、この間、テレビ電話の便利さに魅了された。
 何しろ、娘の顔を携帯画面で見ながら、話ができるのである。
 妻と話した時は、涙がでた。

 この携帯のテレビ電話を体験してみて、ここ数年で一番の面白さを感じたのだが、今ひとつ、盛り上がりに欠けるのはなぜだろう。
 テレビのコマーシャルがあれだけ流れているのだから、もっと、みんなが利用してもいいのに-----。
 携帯のテレビ電話は、今の僕の趣味である。
 これから、雑誌の取材などで、「趣味は?」と訊かれたら、「テレビ電話」と答えることにしよう。


<註:おじさんは孤独でさみしいのだ、そっ~と家族の顔がみたいのである>



 【習文:目次】 



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