2012年3月25日日曜日

★ イワシはどこへ消えたのか:レジーム・シフト:本田良一

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● 2009/03/25


 図でみるようにマイワシは88年をピークに減り始めた。
 一方で、サンマは88年を境にづ得始めた。
 後でわかったことだが、この88年に海では私たちにきづかない間に「異変」が起きていたのだ。



 マイワシが減り、サンマが増える。
 このようにある種の魚が減るにつれて、別の魚が増えいく現象は「魚種交代」として昔から経験的に知られていた。
 ときに魚種交代は社会や経済に大きな影響を与える。
 では、なぜ魚種交代は起きるのだろう。
 人間が獲り過ぎるからだろうか。
 サンマもマイワシと同様、いつか消えてしまうのであろうか。
 食卓にのぼることが多いイカ、ブリ、カツオなどは魚種交代とは無関係なのだろうか。
 1988年、海にどんな「異変」がおきたのだろうか。

 この疑問を解決する案内人となり、キーワードとなるのが「レジーム・シフト」だ。
 レジーム・シフトとは地球規模のシステム変動を示す新しい概念だ。
 <略>
 このレジーム・チェンジが、大気-海洋-海洋生態系という仕組みの基本構造(レジーム)が「数十年」の周期で転換する「レジーム・シフト」という概念に発展する。
 この現象は海の中では、「魚種交代」という形で現れる。
 「レジーム」とは「体制」のことだ。
 政界や経済界で「戦後レジームからの脱却」という場合は、戦後の政治、経済の仕組みを大きく変えることを意味する。
 同様に、この「レジーム・シフト」は、気候や生態系などが数十年周期で転換することを指す。
 
 環境は
 「大気-海洋-海洋生態系という地球の基本的な構造(レジーム)」
によって決定される。

 10年ぶりに改定され、2008年1月に発売された『広辞苑』第6版にも「レジーム・シフト」は新語として採用された。
 それには「大気・海洋・海洋生態系からなる地球の動態の基本構造が数十年間隔で転換すること」という説明がある。
 学会、社会で認知されたとはいえ、レジーム・シフトについての一般の理解はまだ少ない。
 だが、環境問題の重要性と、それへの関心が今後ますます高まるにつれて、この概念は大きな役割を果たすことになる。

 日本は周囲を生みに囲まれ、6,852の島(周囲100m以上)から構成されている。
 そのうち約400の島に人が住む海洋国家である。
 最東端の東京都南鳥島から最西端の沖縄県与那国島まで「3,143km」
 最北端の北方領土の択捉島から最南端の東京都沖ノ鳥島まで「3,020km」。
 沖ノ鳥島は東にいくと、米国ハワイのホノルルよりも南にあたり、西へいくと、ベトナムのハノイより南に位置する。
 国土面積は「約38万km2」しかなく、世界で59番目になる。
 だが領海を含む排他的経済水域は、その約11.7倍と広がり、「約447万km2」となる。
 これは世界第6番目の広さになる。

 ある年を境に環境が大きく変わってしまうことがある。
 これを「レジーム・シフト」という。
 それは社会生活や経済活動の中でも見られる。
 2008年秋に、アメリカの住宅バブル崩壊に端を発した金融危機は、瞬く間に世界的な大不況に発展した。
 経済環境が一変し、派遣社員など非正規労働者に加え、正社員のリストラの嵐が吹き始めた。
 いわば「経済のレジーム・シフト」がおきたといえるだろう。
 ある事件や政策をきっかけに、内閣支持率が大きく低下し、派閥やグループの動きが加速する。
 政界再編の動きが出たり、さらには総選挙の結果、与野党が逆転して政権交代が起こる。
 これらは「政界のレジーム・シフト」といえないだろうか。
 
 「資源が低いときは、じっと我慢してチャンスを待つ。
 このとき資源回復の芽を摘んではならない
 レジーム・シフトの父、東北大学名誉教授の川崎健さんの指摘は、そうした状況でも示唆的だ。
 環教の変化を常にモニターして、その動向を把握しておくこと。
 






 【習文:目次】 



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