2010年7月7日水曜日

: 新聞の危機


● 2009/02



『 
 インターネットの原理や技術はアメリカで開発されたものであり、ネットの侵食による「紙離れ」が最も進んでいるのもアメリカである。
 国土の広いアメリカでは、日本のような宅配網はできていないので、新聞の発行部数は日本より少ない。
 2007年で「5千387万部」である。
 日本は朝刊夕刊をあわせて「6千852万部」である。
 全国紙と呼ばれるのは、USAトウデイ、経済紙のウオール・ストリート・ジャーナルぐらい。
 約1500社のローカル紙が都市に根を張っている。
 それが新手のネットビジネスに侵食され、新聞の広告ビジネスが脅かされいるのである。

 日本の新聞界はどうなのだろうか。
 21世紀に入って「新聞はネットのやられてしまう」と取り沙汰されてきたが、日本の新聞界は今や、落城前夜を迎えている。
 日本新聞協会が、加盟している新聞・通信88社から2008年1月時点で調べた結果によると、すべてがウエブサイトを開設しており、合計176サイトを数える。
 連携の動きも広がっている。
 共同通信社が音頭をとって2006年12月には、地方紙など53社が連携した「47news(よんななニュース)」がスタートしている。
 有料制のサイトは、ごく僅か。
 ほとんどの新聞社サイトは閲覧無料である。
 新聞社のネット事業で、採算がとれている会社はごくわずかしかない。
 「MSN産経ニュース」など5サイトで2008年10月に計9億2500万の月間ページビューを記録した産経だけが黒字である。
 ネット事業全体では、日経だけがなんとか黒字である。

 産経新聞社は2007年10月、
 「ウエブ・ファースト」
に踏み切った。
 マイクロソフトとの共同ブランドサイト、MSN産経ニュースを発足させるにあたり、紙とウエブの編集体制を統合し、スクープ記事も紙媒体の発行を待たずにニュースサイトに掲載することを宣言したのである。
 日本の新聞界では初めての試みである。
 日本の新聞社はネット報道に早くから着手していたが、記事の出稿はあくまでも「紙優先」だった。
 デジタル媒体用の速報記事を積極的に出そうという意識変化は起こらなかった。
 産経のようにこれだけ割り切った新聞社は他にない。
 多くの新聞社が、
 「総合メデイアグループを目指す」
などと標榜しているが、インターネットに今後、いかに対応していくか、腰が定まっていない。
 抽象論に終始しているだけで、ネット事業の具体的な経営戦略を描くに至っていない。

 ネット時代には、誰もが情報を発信できるし、ジャーナリストにもなれる。
 世の中の出来事に対し、ブログでコメントを加えれば、それはジャーナリスト活動の一つである。
 「ネット論説委員」「ネット解説委員」が巷に溢れでてきたともいえる。
 ネット上の情報と既存の新聞、テレビでの言説が交錯しながら、世論が形成されていく時代に入ってきた。
 ネットはジャーナリズムの在り方に変革を迫っている。
 既存のプロのジャーナリズムとは違った視点からニュースを発掘し、「おや」と思わす解説を加える
 「市民ジャーナリズム」
が勃興しつつあるのだ。
 市民記者が書いた記事を編集して、日々ニュースを配信する「ネット新聞」がその好例だ。
 ウエブサイトには、真偽あやふやな情報や人権侵害情報、無責任で為にする中傷などが氾濫している。
 「ネットの情報は、信用できない」
という不信感が根強い。
 ネット新聞に記事が掲載されても、謝礼はゼロか、ほんの薄謝である。
 それでも「表現」や「主張」をしたい市民はたくさんいる。
 もっとも、市民記者という呼称は素人記者と同義である。
 「事実確認が不十分」、「主観的すぎる」「ウッと思わせる、考えさせる記事が少ない」「文章がこなれていない」といった欠点が、ネット新聞にはつきまとう。
 既存の新聞社のような取材網があるわけではないから、一次情報の焼き直しが記事が多い。
 ただ、ネット新聞は誕生してたかだか数年である。
 決めつけた評価は禁物であろう。
 ヤフー、グーグルなどのニュースサイトや新聞社のサイトは、「紙の記事」の転載であるが、ネット記事は建前としてはオリジナルな記事である。
 一定の年季を経れば、ネット新聞はそれなりの影響力を発揮し、市民権を獲得する可能性がある。
 そうなると、「新聞離れ」の加速要因ともなってくる。







 【習文:目次】 



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