2010年2月23日火曜日

★ 資源インフレ:はじめに:柴田明夫


● 2006/04



 現在、国際資源市場で起こっている価格の上昇は、従来の循環的なものではなく、これまでの価格の2倍、3倍、あるいはそれ以上という非連続的な変化である。
 突如として出現した「高い資源価格時代」は、さながら物体が熱せられると分子活動が活発になるように、資源をめぐり国家、企業、投機マネー、技術開発など様々な動きを活発化させずにはいられない。
 これが、従来の延長線上ではとらえられない均衡点を変えるような非連続的変化を、国際資源市場にもたらしているのだ。
 この非連続的変化をいち早く察知し、果敢に先手を打っているのが、アメリカと中国である。
 資源が持続的経済成長の最大の制約要因となりかねないという判断から、国策として国際資源の獲得にに向かっているのが中国である。
 資源価格の長期上昇を見越して「安い段階での資源手当て」に走っているのがアメリカである。

 特に米国は、1990年代に世界経済をリードした金融資本主義やIT(情報技術)産業に代わる21世紀型成長モデルが、中国などBRICsにおける新たな「モノ作り」に変わったと認識し、そして、それが膨大な資源需要を喚起するとみているフシがある。

 2006年に入って相次いで顕在化した地政学的リスクは、資源争奪をめぐる不均衡が表面化したものといえる。
 それが最も先鋭化して現れているのが原油市場である。
 すなわち、原油価格は主に以下の4つの地政学的リスクの噴出により、上振れリスクが高まっている。
①.イラク情勢の泥沼化
②.ナイジェリア問題の深刻化
  貧困地帯ニジェールデルタでの石油開発は、貧富の格差を拡大し、民族紛争、武装テロを活発化させている。
③.イランの核開発問題
④.サウジアラビアの危険度上昇
  石油施設を狙った自爆テロは未遂に終わったものの、危惧されていたリスクが現実となった。
  サウド家もイスラム原理主義のテロの対象になっていることが再認識された。

 これまで四半世紀にわたり省エネ・省資源の優等生であった日本経済にとって、高い資源の時代が到来したということは、新たな出番がやってきたといえる。
 資源の高止まりが暗示するのは、これを活用して新たな資源の開発、代替エネルギーの開発、高い資源に対応した「環境配慮型社会システムの構築を行え」、というシグナルでもある。
 資源高騰を「投機マネーによる一過性の現象」と考え、高い資源時代の到来に対して何もしようとしない「無作為」こそが、日本にとっての真のリスクである、と捉えるべきである。





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