2010年2月19日金曜日

★ 親父の日本:書き終えて


● 1995/07



 「日本」と「親父(おやじ)」というテーマで大人向けの絵本を創作したいという思いは、ずいぶん昔からありました。
 私たち昭和10年前後に生まれた世代には少し変わり者が多く、「沈黙の時代」であると同時に、超スーパースターの多産世代でもあります。
 石原裕次郎、水原弘、長嶋茂雄、大江健三郎などと並べると、それぞれの分野で、戦後の風俗・文化をダイナミックに変えてしまった新鮮で個性的な人々でした。
 また昭和30年代という時代は、日本経済の胎動期で、その後の大繁栄を予兆させるような時代が生んだ大スターで、その時代の新しいタイプの日本人像でした。

 しかし最近、日本の若い人が、何か変わってきたように思うのです。
 野球の野茂英雄、イチロー、相撲の貴乃花などの活躍を見ると、今までの日本人像と少し違うタイプではないかと思うのです。
 もっとも、アメリカ生まれのスポーツ野球と、日本の伝統国技(相撲界も国際化している)という違いはありますが。
 どちらにも、劣等感というものが少しも感じられません。

 私は、「根性」という言葉があまり好きではありません。
 明治開国以来の日本人の国際的劣等感がしみついているように思われるからです。
 野茂、イチロー、貴乃花のタイプの人たちは、一様に国際人たりえるし、同時に日本の顔を代表するアイデンテイテイを併せ持って、新しい日本人のような気がするのです。
 彼らは、
  「この道しか、我に行く道は無し、故に我は行く」
 という独立自尊の気概が感じられるのです。
 もっとも、私の息子と娘と同世代ということで少し贔屓目に見ているかもしれません。

 今後、日本人が戦後の「ルサンチマン」という厚い壁を突破するなら、素晴らしい国際人となるでしょう。
 平成不況は、日本人が迎えた戦後最大の国難です。
 しかし、「災い転じて福となす」の諺の通り、日本人に与えられた大きな試練と受け止め、歯を食いしばっても頑張ることを覚悟しなければならないでしょう。
 歴史を振り返ると、この民族は国難を乗り切ると思います。
 
 実は、「親父の日本」執筆には3年の長き時間をかけてしまいました。
 テーマがあまりに難しく、私自身の手に余る問題であり、何度かギブアップしそうなところを、多くの方々に助けられ、ようやく世に出ることになりました。


[◇ 著者の文から p102]
ルサンチマン:resentiment(仏):怨恨、遺恨
特にニーチェの用語で、弱者に対する憎悪を満たそうとする復讐心が、内攻的に鬱積した心理をいう。
キリスト教の道徳・社会主義運動の中にあるとされる。




 【習文:目次】 



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