2010年4月21日水曜日

★ 陽気なギャングが地球を回す:伊坂幸太郎


● 2009/05[2006/02(2003/02)]



文庫版あとがき

 90分くらいの映画が好きです。
 もちろんその倍以上のものでも、半分くらいのものでもよいのですが、時計が一回りしてきて、さらに半周進んだあたりで終わる、そんな長さがちょうど体質にも合っているようです。

 あまり頭を使わないで済む内容であれば、そちらのほうが好ましいです。
 アイパッチをつけた男が刑務所に忍び込んで、要人を救出して逃げだしてくる¥。
 そういうのはとても良いですね。
 現実味や、社会性というものはあってもいいのですが、ないからといってあまり気になりません。
 今回、ふと、そういうものが読みたくなり、銀行強盗のことを書いてみました。
 4人の銀行強盗が出てきて、わいわいガヤガヤと喋りながら、騒動に巻き込まれていく話です。
 現実世界とつながっているように見えながらも、実はつながっておらず、また、寓話のようにも感じられるかもしれませんが、寓意は込められていない、そういうお話になりました。

 実は、この4人の銀行強盗たちを引っ張り出すのは、これが初めてではありません。
 数年前、サントリーミステリー大賞で佳作をいただいたことがあるのですが、その話にも彼らは登場してきます。
 当然ながら内容は別物で、そこでの彼らは、銀行をうまく襲撃した後で誘拐事件に巻き込まれたりしています。
 彼らは饒舌で、時にのんびりしていますので、もしかすると、傍目からはふざけているように見えるかもしれませんが、本人たちは真剣だったりします。
 真剣な人たちのことが僕は嫌いではありませんので、彼らの話を書くのは苦痛ではありませんでした。

 読み終えた方々が何かの折に、
  「そう言えば、あいつらどうしているのかな」
と思い出してくれれば、これほど嬉しいことはありません。

 2003年1月8日    伊坂 幸太郎









 【習文:目次】 



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